【はじめに】

​足関節捻挫 (ねんざ) は最も頻度が高いスポーツ外傷の一つです。

それと同時に、最も軽く見られがちな怪我であり、適切な診断や治療が行われていないことから、

受傷後1年の時点で2/3以上の人で疼痛や不安定感といった症状が残存し、

半数以上の人が慢性的に捻挫を繰り返すと報告されています。

第1回は、意外と奥深い捻挫について解説してみたいと思います。

捻挫とは、関節に強い力が加わり関節を支えている靱帯などの組織が痛むことをいいます。

足関節捻挫、膝関節捻挫、頚椎捻挫 (いわゆるむち打ち) など、様々な捻挫がありますが、

ここではサッカー中によく起こる足関節捻挫に絞って話を進めます。

捻挫≒靱帯損傷であり、一口に捻挫と言っても軽症のものから重症のものまで幅広く起こります。

症状としては、受傷部位の痛み、腫れ、皮下出血などがあります。​

​損傷した靱帯内の細かい血管が傷つくことによってそれらの症状が出現します。

痛みを感じにくい靱帯もあるため、捻挫を軽くみてしっかりと治療せずにプレーを続けていると

足首がゆるく、不安定になったり、関節内の軟骨がすり減って新たな痛みの原因になります。

可能であれば受傷後早期に、スポーツドクターなどがいる医療機関を受診しましょう。

【分類】

捻挫を軽くみてはいけない理由の一つは、さまざまな疾患が隠れているからです。

​受傷機序によって、捻挫は大きく次の3つに分類されます。

(1) 内返し捻挫

  

 足関節捻挫の中で最も多い、足首を内側に強くひねった時に生じるタイプです。

 この時に損傷される靱帯は、足首の外側に存在する靱帯であり、

 その中でも特に前距腓靱帯が損傷されやすいです。

 鑑別としては、二分靱帯損傷や踵骨前方突起骨折、背側踵立方靱帯損傷、第5中足骨基部骨折

 距骨骨軟骨損傷、腓骨筋腱脱臼などが考えられます。

(2) 外返し捻挫

 

 内返し捻挫とは逆に、足首を外側に強くひねった時に生じるタイプです。

​ 全体的に頻度は少ないとされていますが、サッカー中の怪我としては比較的頻度が高く見られます。

 内果 (内くるぶし) 下方の内側靱帯の損傷が起こり、さらに重症になると

 前下脛腓靭帯や脛腓骨間膜が損傷される可能性があります。

(3) 足部軸圧による捻挫

 一般的には見逃されやすい捻挫ですが、つま先立ちの状態で体重がかかるような受傷起点では

 リスフラン靱帯損傷が起こりやすいです。

 リスフラン靱帯は、図の位置にある靱帯で、足部の内側縦アーチの維持に重要な靱帯です。

 体重を真っ直ぐかけた時に足背部が痛いような時には、医療機関を受診してください。

 鑑別としては、中足骨骨折やリスフラン関節脱臼骨折などが考えられます。

【診断

まず​圧痛部位を入念に確かめます。靱帯が損傷されている場合には、靱帯の走行上に圧痛が存在します。

外側靱帯損傷の場合には、多くは腓骨付着部 (外くるぶしの少し下) に圧痛を認めます。

実際に、靱帯の圧痛と皮下出血が存在していたら、外側靱帯損傷診断の感度は88%、特異度は78%

といわれています。一方で、足を前方に引っ張って不安定性をみる前方引き出しテストのみでは感度85%、特異度75%です。

これら3つが全て陽性であれば、靱帯損傷診断の感度は94%、特異度84%と高くなります。

近年では、超音波エコー検査や MRI 検査ではほぼ100%の診断率といわれているため

上で述べたような骨折・骨軟骨損傷・骨挫傷などが合併していないかも含めて、

捻挫を強く疑った時には一緒に調べてもらいましょう。

 MRI 検査は費用も高く、通常予約制での検査となるため、捻挫の全例で行う必要は全くありませんが、

靱帯治癒後にも症状が持続し、あるいは通常よりも明らかに重症の場合には

MRI 検査を行ってしっかりと治療計画を立てててください。

【治療】

急性期の治療としては、​受傷時のRICE (ライス) 処置、適切な固定、復帰までのリハビリが重要になります。

​RICE 処置についてはまた次回の記事で解説したいと思います。

急性期の治療が済み、靱帯損傷が軽度で不安定性がない場合にはサポーターもしくはテーピングを行い、

完全な靱帯損傷を認める場合には2〜3週間のギプス固定を行ないます。

いずれにせよ、復帰直後は捻挫が再発しやすいため、筋力トレーニングを行ったり

​サポーターなどを装着して保護することが推奨されます。

 

【復帰】

捻挫の治療が不十分なまま復帰を急ぐと、上で述べたように不安定性が残ったり再発したりするため、

なるべく専門施設でリハビリテーションを行ってから復帰することが重要となります。

具体的には、疼痛が出ない範囲で自動運動 (手を用いずに、足だけで動かす) から開始し、

外返し、内返し運動とアーチ形成に関連した腓骨筋・後脛骨筋と、

地面をしっかりと掴むための足趾内在筋の筋力強化は、

足関節・距骨下関節の安定化に重要な要素となるため積極的に行いましょう。

筋力と可動域が怪我をしていない方の足の80%程度に改善すればランニングなどの直線的な運動から開始し、問題なくできるようになれば、8字走行、切り返し運動を行い、

痛みなくできれば競技復帰ができるようになります。

【予防】

競技復帰した後にも、再受傷を予防するためには入念な対策が必要となります。

上で述べたような筋力トレーニングに加え、トレーニング前にはしっかりと

足関節・足趾の柔軟性を高めるストレッチを行いましょう。

また、サポーターを復帰直後に装着することは多いに推奨されますが、

ずっと装着し続けることは筋力強化の制限因子となるため、

しばらくして不安感などが無くなった際には、外す勇気も必要となります。

不適切なサイズのスパイクが捻挫の原因となることもあります。

​捻挫しやすい方は、アウトソールが硬いものや、ハイカットタイプが推奨されます。

以上で足関節捻挫に関する解説を終わります。

今後も10日に1つの記事を目標に連載を続けていきたいと思います。

記事に対するご意見、今後希望するテーマなどがありましたら

​ご遠慮なくお問い合わせフォームからご連絡ください。

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